責任

― 責任を負うとは、何を引き受けることなのか ―

「責任を持って仕事をしてください。」

仕事の中でよく使われる言葉ですが、「責任とは何ですか」と改めて聞かれると、意外と説明が難しい言葉でもあります。

役職が上がれば責任が重くなる。問題が起きれば誰かが責任を取る。担当者には結果に対する責任がある。このように、責任という言葉は、失敗や問題が起きた時に使われることが多いように思います。

しかし私は、責任とは問題が起きた後に初めて発生するものではなく、何かを引き受けた瞬間から始まっているものだと考えています。

責任とは「自分のこと」として考えること

仕事をしていれば、予定通りに進まないことはいくらでもあります。設備が止まることもあれば、納期が遅れることもあります。部下がミスをすることもあれば、取引先から材料が入ってこないこともあります。自分ではコントロールできない外部環境の変化によって、計画そのものを見直さなければならないこともあります。

こうした時、「私は聞いていません」「担当者がやったことです」「他部署の問題です」と言うことは簡単です。もちろん、事実関係を整理し、誰がどの役割を担っていたのかを明らかにすることは必要です。

しかし、責任とは単に「誰のせいなのか」を決めることではないと思います。

特に経営者や管理者に求められるのは、「誰が悪かったのか」よりも先に、自分の立場で何ができたのかを考える姿勢ではないでしょうか。

部下が失敗したのであれば、本人だけを責めるのではなく、指示は明確だったのか、必要な教育は行われていたのか、無理な仕事を与えていなかったか、途中で確認できる仕組みはあったのか、と考える必要があります。

そう考えることによって、責任という言葉は、人を責めるためのものではなく、次の改善につなげるための言葉に変わります。

責任と権限は一緒に考える

一方で、「責任を持て」と言いながら、その責任を果たすための権限を与えていない組織もあります。

結果については責任を求められるのに、人員配置は変えられない。必要な予算も使えない。設備投資の判断もできない。取引先との条件変更も自分では決められない。この状態で「結果に責任を持て」と言われても、責任を果たすことは難しいでしょう。

私は、責任と権限は切り離して考えるべきではないと思っています。

責任を任せるのであれば、その責任を果たすために必要な判断も任せる。そして、判断を任された側は、その結果について引き受ける。この関係があって初めて、本当の意味での権限移譲になります。

これは管理者だけの話ではありません。現場のリーダーにも一定の判断を任せることで、「上司から言われたからやる仕事」から、「自分が担っている仕事」へと意識が変わっていきます。

任せるということは、仕事だけを渡すことではありません。責任だけを押しつけることでもありません。責任と権限を一緒に渡し、その結果を一緒に確認していくことなのだと思います。

責任を取ることと、辞めることは同じではない

大きな問題が起きた時、「責任を取って辞任する」という表現があります。

もちろん、立場を退くことが必要な場合もあります。しかし私は、責任を取ることと、辞めることは必ずしも同じではないと思っています。

問題が起きた原因を明らかにし、できる限り損失を回復し、関係者に説明し、再発防止の仕組みをつくる。そして、自分がいなくなった後にも同じ問題が起こらない状態を残す。そこまで行って初めて、責任を果たしたと言える場合もあるのではないでしょうか。

時には、その場から離れることよりも、その場に残り、問題と向き合い続ける方が苦しいことがあります。

だからこそ、責任には「立場」だけではなく、結果から逃げずに向き合い続ける覚悟が必要なのだと思います。

何でも自分で抱えることが責任ではない

ただし、責任を持つことと、何でも自分で抱え込むことも違います。

管理者が部下の失敗をすべて自分で処理してしまえば、部下は自分で考える機会を失います。経営者がすべての判断を行えば、管理者はいつまでも育ちません。

責任感の強い人ほど、「自分がやった方が早い」と考えてしまうことがあります。しかし、それを続けると、自分自身が組織のボトルネックになってしまいます。

自分が引き受けるべき責任からは逃げない。一方で、相手が担うべき責任は相手に任せる。そして、必要な時には支援する。

この境界をつくることも、責任あるリーダーの仕事ではないでしょうか。

責任を持つということは、すべてを自分で処理することではありません。一人ひとりが自分の役割を引き受けられる組織をつくることも、管理者の責任なのだと思います。

責任を「過去」ではなく「未来」に向ける

責任という言葉には、どうしても重い響きがあります。

問題が起きると、「誰の責任なのか」という話になります。もちろん、責任の所在を明確にすることは必要です。しかし、それだけで終わってしまえば、組織には「失敗したら責められる」という空気だけが残ります。

そうなると、人は問題を隠すようになります。自分の責任にならないように、判断を避けるようになります。新しいことにも挑戦しなくなるかもしれません。

だから私は、責任を過去だけに向けるのではなく、未来に向けることが大切だと思っています。

「なぜ起きたのか」を考えた後には、必ず「では、次にどうするのか」を考える。

失敗した人を探すのではなく、同じ失敗が起きない仕組みをつくる。問題の責任を追及するだけでなく、その経験を次の成長につなげる。

そこまで考えて初めて、責任という言葉が組織を良くする力になるのではないでしょうか。

責任とは、結果の先まで引き受けること

責任とは、完璧であることではありません。

責任ある人でも判断を誤ることはありますし、どれだけ準備しても失敗することはあります。

大切なのは、その結果から逃げないことです。

うまくいかなかった時に、自分以外の誰かのせいにするのではなく、自分には何ができたのかを考える。そして必要であれば、自分の判断を修正し、次の行動につなげていく。

そう考えると、責任とは「失敗した時に罰を受けること」ではなく、もっと前向きな概念に見えてきます。

責任とは、自分が引き受けたことについて、結果だけでなく、その後の行動まで引き受けること。

そして、責任を果たすために必要な権限を持ち、その権限を自分のためではなく、組織や他者のために使うこと。

私は、それが「責任を持つ」ということなのではないかと思っています。