改善活動が続かない会社に共通する3つの問題
― 「やる気」の問題にしてはいけない ―
「改善活動を始めたのですが、半年くらいすると止まってしまいました。」
製造業の支援をしていると、よく聞く話です。
最初は改善提案が出る。5S活動も始まる。会議も毎月開催する。しかし、しばらくすると提案件数が減り、会議も報告だけになり、いつの間にか活動そのものが形骸化してしまう。
すると、「社員の改善意識が低い」「やる気が続かない」という話になりがちです。
しかし私は、改善活動が続かない原因を、社員の意識だけに求めるべきではないと思っています。
多くの場合、問題はもっと仕組みの側にあります。
特に、改善活動が定着しない会社を見ると、目的が曖昧、時間がない、成果が見えないという三つの問題が共通しているように感じます。
改善すること自体が目的になっていないか
最初の問題は、「何のために改善するのか」が明確でないことです。
「会社として改善活動を始めます。」
「毎月1件、改善提案を出してください。」
「5Sを徹底しましょう。」
こうした活動が始まっても、目的が共有されていなければ、現場からすると仕事が一つ増えただけになってしまいます。
改善そのものが目的になってはいけません。
例えば、段取り改善をするのであれば、その先に「残業を減らしたい」「小ロット生産に対応したい」「新しい注文を受けられる余力をつくりたい」という目的があるはずです。
5Sも同じです。
床をきれいにすることが目的ではありません。工具を探す時間を減らす。異常に気づきやすくする。安全性を高める。不要な在庫を減らす。その結果として、生産性や品質を高めるために行うものです。
現場が「なぜこれをやるのか」を理解していなければ、活動は次第に作業へ変わります。
改善活動を続けるためには、活動の目的を経営課題につなげることが必要です。
「時間ができたら改善する」では、永遠に時間はできない
二つ目は、改善する時間が確保されていないことです。
現場は毎日の生産で忙しく働いています。その中で、「時間があったら改善してください」と言われても、目の前の生産が優先されるのは当然です。
設備が止まれば対応する。納期が迫れば残業する。欠勤者が出れば応援に入る。こうして改善活動は、いつも後回しになります。
そして改善できないから、ムダな作業や設備トラブルが減らず、さらに忙しくなる。
これは典型的な悪循環です。
改善は余裕がある会社が行うものではありません。
余裕をつくるために改善するのです。
だから経営者や管理者は、改善活動を本当に重要だと考えるのであれば、そのための時間を意識的に確保する必要があります。
例えば、週に30分でも構いません。現場のメンバーが集まり、問題を一つ選び、原因を考え、小さな対策を実行する。その時間を「空いたらやる仕事」ではなく、通常業務の一部として扱うことが大切です。
改善のための時間を与えずに、「もっと改善提案を出してほしい」というのは難しいと思います。
成果が見えなければ、人は続けられない
三つ目は、改善した結果が見えていないことです。
現場が改善案を出しても、その後どうなったのか分からない。提案書を提出したが返事がない。実施しても、効果について何も言われない。
これでは、次の改善案を出そうという気持ちは次第に薄れていきます。
改善活動では、結果をできるだけ見えるようにすることが重要です。
例えば、工具の配置を変えたことで、1回2分かかっていた作業が30秒になった。段取り方法を変えたことで、60分が45分になった。不良対策によって、月20件あった不良が10件になった。
こうした成果を、数字や写真で共有します。
そして、その改善が利益や残業、納期にどうつながったのかまで伝えると、さらに意味が明確になります。
「この改善で年間100時間削減できました。」
そう伝えられれば、改善した本人も、自分の仕事が会社に貢献していることを実感できます。
小さな改善であっても、それを認め、成果を共有することが次の改善につながります。
改善提案件数を目標にしすぎない
改善活動を活性化するために、「一人年間12件」「月1件」といった提案件数を目標にする会社があります。
私は、件数そのものが悪いとは思いません。改善を考える習慣をつくるきっかけにはなります。
しかし、件数だけが目的になると、本来の改善から離れてしまうことがあります。
提案件数を達成するために、小さな内容を無理に分割したり、実施する必要のない提案まで出したりするようになれば、制度そのものが形骸化します。
重要なのは、何件出したかではなく、現場が自分たちの問題に気づき、自分たちで良くしていく習慣ができているかです。
大きな改善が毎月出る必要はありません。
工具の置き場所を変える。表示を分かりやすくする。作業手順を少し変える。それによって1分でもムダが減る。
こうした小さな改善を積み重ねることの方が、長期的には強い現場につながります。
管理者が答えを出しすぎない
改善活動が続かない原因は、管理者側にもあります。
現場から問題が出ると、経験豊富な管理者ほどすぐに答えを教えたくなります。
「それならこうすればいい。」
確かに、その方が早く問題を解決できます。
しかし、それを繰り返すと、現場は「困ったら上司に聞けばよい」と考えるようになります。
改善活動で本当に育てたいのは、単なる提案件数ではなく、問題に気づき、自分たちで考える力ではないでしょうか。
管理者は答えを与える人ではなく、「なぜそうなっていると思う?」「どうしたら変えられる?」と問いかけ、一緒に考える役割へ少しずつ変わる必要があります。
時間はかかります。
しかし、自分たちで考えて実行した改善は、上から指示された改善よりも定着しやすくなります。
改善を「イベント」から「日常」に変える
改善活動が続く会社と続かない会社の違いは、特別な改善手法を知っているかどうかではないと思います。
目的が明確になっている。改善する時間が確保されている。そして、小さな成果が見えるようになっている。
この三つが日常の仕事の中に組み込まれている会社では、改善は特別なイベントではなくなります。
私は、改善とは一度大きな成果を出して終わるものではないと考えています。
今日より明日、明日より来週、ほんの少し仕事を良くする。その小さな積み重ねによって、数年後には大きな差になります。
「社員の改善意識が低い」と考える前に、まず会社側が問い直してみる必要があります。
改善する目的を伝えているか。改善する時間を与えているか。そして、改善した成果を一緒に確認しているか。
改善活動が続くかどうかは、社員のやる気だけで決まるものではありません。
改善を続けられる仕組みをつくること自体が、経営の仕事なのではないでしょうか。



