【概念思考|後始末】

「後始末」とは、物事が終わったあとを整理し、きちんとけりをつけることを意味します。

「後」という字は、道を進む中で歩みが遅れ、後ろに残る様子から、「あと」「うしろ」という意味を持つようになったとされています。

「始」は、「女」と「台」から成り、命が生まれることから「物事のはじめ」を表すようになりました。

一方の「末」は、木の先端を示す形から、「ものの端」「物事の最後」という意味を表します。

つまり「後始末」とは、始めた物事を最後まで見届け、終わりをきちんと整えることだと捉えることができます。

私は「後始末」を概念化すると、

「有終」
「人格」
「能力」

の三つで捉えています。

後始末をきちんとすることは、新しいことに挑戦するうえで、とても重要なことだと思います。

何かを始めることには、勢いがあります。

新しい事業を始める。
新しい製品をつくる。
新しい活動に参加する。

始めるときには期待もあり、周囲からも注目されます。

しかし、本当に大切なのは、始めることだけではありません。

最後までやり切り、必要であればきちんと終わらせる。

ここまでできて初めて、「有終」なのだと思います。

後始末ができないまま、何となく続けている仕事や活動が増えていくと、時間も人もお金も少しずつ奪われていきます。

本人は続けているつもりでも、実際には価値を生まず、無駄を垂れ流していることもあります。

だからこそ、ときには、

「これは本当に続ける必要があるのか」

と問い直すことが必要です。

後始末とは、単に片づけることではありません。

不要になったものを見極め、やめるべきものはやめ、次に進むための余白をつくることでもあります。

私は、物事を始める段階から「終わり」を考えておくことが大切だと思っています。

例えば、新しい製品を開発するのであれば、発売することだけではなく、その製品がいつまで市場に必要とされるのか、いつ改良するのか、そしていつ終売するのかまで考える。

事業についても同じです。

どのような状態になれば続けるのか。
どのような状態になれば方向転換するのか。
どの条件になれば撤退するのか。

あらかじめ一定の基準を持っておけば、感情だけでズルズルと続けることを防ぐことができます。

後始末には、「能力」が必要です。

始める能力とは違い、終わらせるためには現状を冷静に見る力が求められます。

これまで使った時間や費用に執着せず、今後も続ける価値があるのかを判断する。

時には、自分が始めたことを「やめる」と決断する勇気も必要です。

そして、後始末には、その人の「人格」も表れると思います。

自分が関わった仕事を途中で投げ出さない。
関係者に説明する。
約束したことを整理する。
迷惑を残さない。
最後まで責任を持つ。

どれほど華々しく物事を始めても、最後が雑であれば、それまで積み上げてきた信頼まで失ってしまうことがあります。

反対に、終わるときにこそ丁寧に対応できる人には、次の機会が生まれます。

「立つ鳥跡を濁さず」という言葉がありますが、人の本当の姿は、始めるときよりも、終わるときに表れるのかもしれません。

私自身も、今抱えている仕事や活動について、本当に必要なものは何かを常に考える必要があると思っています。

限られた時間の中で、新しいことを始め続けるだけでは、すべてが中途半端になってしまいます。

続けるものを決めることと同じくらい、終わらせるものを決めることも重要です。

一つをきちんと終わらせることで、次のことに集中できる。

後始末とは、過去を整理する作業であると同時に、未来をつくるための準備でもあります。

最後までやり切る「有終」。
終わり方に表れる「人格」。
続けるか、やめるかを判断する「能力」。

私は、後始末ができる人こそ、新しいことに安心して挑戦できる人なのだと思っています。

始めることよりも、終わらせることの方が難しい。

だからこそ、何かを始めるときには、最後まで責任を持つ覚悟を持ちたいと思います。