【稼働率改善】溶接工程の稼働率を「50%から80%へ」引き上げた、IE(インダストリアル・エンジニアリング)によるムダ取りの全貌
「稼働率を上げろと現場に言っているが、一向に改善しない」 「新しい設備を入れなければ、これ以上の増産は無理だ」
生産性を上げようとするとき、私たちはつい「新しいロボットや設備を入れること(設備投資)」を考えがちです。しかし、本当に既存の設備や人の「実力」を限界まで引き出せているでしょうか?
ある溶接工程で、稼働率が「50%」と低迷し、納期遅れが常態化している現場がありました。 現場からは「設備が足りない」「人が足りない」という声が上がっていましたが、追加投資を行う前に、IE(インダストリアル・エンジニアリング)の手法を用いて現場の「ファクト(事実)」を徹底的に可視化しました。
その結果、設備を一切増やすことなく、溶接工程の稼働率を「80%」へと劇的に引き上げることに成功したのです。
今回は、その裏側にある「ムダ取り」の全貌を公開します。
■ 「忙しそうに動いている」=「付加価値を生んでいる」ではない
IEの創始者の一人であるフランク・ギルブレスは、動作を分析することで徹底的にムダを省きました。
今回の溶接現場でも、作業員は一日中、息つく暇もないほど忙しそうに動いていました。しかし、作業分析(タイムスタディ)を行ってみると、衝撃の事実が明らかになったのです。
実際に溶接の火花が散っている時間(=付加価値を生んでいる正味作業時間)は、なんと全体の「50%」しかなかった。
残りの50%は、「治具の調整」「材料の運搬」「部品を探す時間」「機械の段取り替え」といった、直接付加価値を生まない「付随作業」や「ムダ」で占められていた。
つまり、現場が忙しかったのは「付加価値の高い仕事」をしていたからではなく、「作業のやりづらさ(ムダ)」に振り回されていたからだったのです。
■ 稼働率を80%に引き上げた「3つのIEアプローチ」
私たちが実施した、現場に負担をかけずに稼働率を爆発的に高めたステップは以下の通りです。
1. 内段取りの「外段取り化」を徹底する
機械を止めて行っていた「次の部材の準備」や「治具の調整」を、機械が動いている間に別の場所で準備しておく(外段取り化)ように変更しました。これにより、溶接ロボットや設備が停止している時間を極限まで短縮。設備が「火花を散らしている時間」を強制的に増やしました。
2. 「動作経済の原則」に基づき、配置をミリ単位で最適化する
作業者の動きをビデオで撮影し、細かく分析しました。 部材を取りに行くために「一歩歩く」、必要な工具を探すために「目線を動かす」。これら一回数秒の微細なムダが、1日で何百回と繰り返されることで膨大なロスになっていました。工具や部材の置き場所を「手を伸ばせば届く範囲(最小限の動作領域)」に配置し直すことで、作業者の疲労を減らしつつ、作業スピードを劇的に向上させました。
3. ネック工程(ボトルネック)へのリソース集中
工場全体の生産量は、最もスピードの遅い「ボトルネック工程」で決まります。 今回はこの溶接工程がボトルネックだったため、前後の工程(プレスや組立)の作業者を一時的に応援に回し、溶接作業者が「溶接だけに専念できる体制」を構築。工場全体の流れ(スループット)を最大化しました。
■ IEとは「人を楽にするための科学」である
「稼働率を50%から80%にする」と聞くと、「現場をそれだけ激しく働かせたのか」と思われるかもしれません。
しかし、現実はその真逆です。 IEによる改善とは、作業者に「もっと早く動け」と強いること(根性論)ではありません。むしろ、「歩く、探す、迷う、調整する」といった、作業者を疲れさせるだけの「不必要な動き」を徹底的に取り除いてあげることです。
ムダな動きがなくなれば、作業者は以前よりも「楽に、安全に」働けるようになり、結果として生産性が跳ね上がります。
皆さんの現場の「忙しさ」の正体は、本当に「付加価値を生む仕事」でしょうか? 一度、ストップウォッチとビデオカメラを手に、現場の「ファクト」を静かに観察してみてはいかがでしょうか。
【皆さんの現場ではいかがでしょうか?】 「忙しそうなのに、なぜか生産量が上がらないといった悩み」や、「IE手法(タイムスタディや5Sなど)を使って成果が出た事例」など、ぜひコメント欄でご意見をお聞かせください!
HP: https://virtueandintellect.com/
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