DXや生産性改善は目的ではない。人が誇りを持って働くための「手段」である

「他社がやっているから、うちもそろそろDXを進めなければ」 

「生産性を改善して、とにかくコストを削れ」 

現在、多くの製造現場で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「生産性向上」の旗が振られています。しかし、最新のITツールを導入したものの現場に定着しなかったり、数字だけの効率化を急いだ結果、現場のモチベーションが下がって離職が増えてしまったりといった話をよく耳にします。 

なぜ、多大な投資や努力を重ねているにもかかわらず、このような悲劇が起きてしまうのでしょうか。 

理由は明確です。「DX」や「生産性改善」そのものが目的になってしまっているからです。 

■ 経営の原点「利他」と、手段の目的化という罠 

ビジネスにおいて、利益を確保し、効率を高めることは当然重要です。しかし、経営の原点に立ち返ってみてください。 

私たちの企業の目的は、単に利益を上げる(利己)こと以上に、「縁ある人々を幸せにし、社会に貢献すること」のはずです。  

利益や効率ばかりを「目的」に据えてしまうと、現場の人間は「数字を達成するための部品」のように扱われ、嫌われないための演技や、本音を押し殺す我慢を強いられるようになります。その結果、組織の中には「指示待ち人間」が増え、生命力が失われていくのです。  

DXも、生産性改善も、それ自体は決して目的ではありません。 それらはすべて、「現場の人間が安全に、安心して、みずからの仕事に誇りを持って働くための『手段』」なのです。  

■ 安全と効率が融合したとき、数字は後からついてくる 

私がかつて関わった製造現場での改革(OEE改善など)が、まさにそうでした。 そこは当時、年間11件もの労災が発生しているという深刻な状態でした。これこそ、働く人が誇りや安心を持てない最悪の環境です。  

私たちが実践したのは、外資系の徹底した合理化(仕組み)と、日本的な「人を大切にする経営(思想)」の高度な融合でした。  

まず、利益のためではなく「仲間の安全を守る(利他)」という目的のために、現場のロスや危険な動線を徹底的にデータ化・見える化しました。そして、現場の作業者一人ひとりと1on1の対話を重ね、彼らの悔しさやストレスを徹底的に「傾聴」したのです。  

「このDXや標準化の仕組みは、あなたの毎日の作業を楽にし、安全に家に帰るためのものだ」と現場が納得し、みずから決めたセルフ・ルール(現代の武士道)として動き出した瞬間、組織は劇的に変わり始めました。  

結果として、年間11件あった労災は『完全ゼロ』になり、それと完全に連動する形で、設備総合効率(OEE)は2.5倍へと跳ね上がったのです。  

安全で、無駄なストレスがなく、誰もが自走できる環境が整ったからこそ、結果としての「圧倒的な生産性向上」という数字が後からついてきました。  

■ 経営者の皆様、アプローチの順番を変えませんか? 

不確実性の高い現代、いくら「他社の成功事例(正解)」を検索しても、あなたの会社の未来の答えは見つかりません。 今一度、「そもそもなぜ経営者になったのか?」「誰を幸せにしたいのか?」という原点に立ち返ることが必要です。  

もし今、貴社で「DXが進まない」「現場の生産性が伸び悩んでいる」とお悩みなら、それは技術や予算の不足ではなく、アプローチの目的が「数字」に向いてしまっているからかもしれません。 

仕組みは冷徹に、思想は温かく。 ツールを導入する前に、まずは目の前の社員の話を「傾聴」し、彼らが誇りを持って働ける土台を共につくっていきましょう。  

製造業の「想い」を現場の「行動」へつなぐ。 現在、私は茨城県を中心に、全会員が共に成長するコミュニティ「製造業リーダーズネットワーク(一般社団法人)」の代表や、中小企業庁・生産性向上センターのサポーターとして、多くの経営者様に伴走しています。  

35年の現場経験とCEOとしての知見をベースに、貴社の志に寄り添った「自走する組織づくり」や「概念思考の導入」について、まずはざっくばらんにお話ししてみませんか?  

製造会社経営者様限定で「100社対話インタビュー(無償)」を実施しておりますので、ご興味のある方はぜひDMまたはコメントにてお気軽にご連絡ください。まずは対話から始めましょう。  

(Virtue & Intellect 代表 / 製造業リーダーズネットワーク 代表 鈴木 美徳)