【労災11件を完全ゼロへ】従業員の安全意識とリスクアセスメントの「抜本的意識改革」のストーリー

多くの現場では、安全対策というと「ルールを守れ」「注意しろ」というスローガンの連呼や、安全看板の設置といった表面的な対策に終始しがちです。しかし、どれほど厳しい規則を作っても、現場の従業員が当事者意識を持たなければ不安全行動はなくならず、災害は再び繰り返されます。私たちが挑んだ意識改革の本質は、安全を「会社から強制されるもの」から「自分たちの命を守るための自発的な行動」へと転換することでした。

労災ゼロを達成するために実行した、リスクアセスメントと意識改革の核心は主に3つあります。

第1に、現場の誰もが参加する「全員参加型のリスクアセスメント」への転換です。これまで安全担当者だけで行っていた危険性の洗い出しを、各ラインの作業員全員で実施する仕組みに変えました。毎日作業している本人だからこそ気づく「ヒヤリハット」や、作業手順に潜む「隠れた危険」を徹底的に吐き出させます。自分たちの意見が反映され、現場の設備や手順が実際に改善されるプロセスを経験することで、従業員の当事者意識が飛躍的に高まりました。

第2に、管理職やリーダー層による「否定しない安全対話」の徹底です。過去の現場では、ヒヤリハットを報告すると「なぜ注意しなかったのか」と責められる風潮があり、これが危険の隠蔽を生む原因になっていました。そこで、どんな小さなリスクであっても、報告した人を徹底的に称賛する文化へ変革しました。これにより、現場から危険の芽がリアルタイムで次々と報告されるようになり、大災害につながる前に先手を打って潰す体制が確立されました。

第3に、リスクの判定基準を誰もが直感的に理解できる形で「可視化」したことです。机の上の難しい計算式ではなく、現場の目線で「どの作業が、どの程度危険か」を赤、黄、緑の色分けなどで明確に示しました。全員が同じ基準でリスクの大きさを共有できるようになったことで、現場のメンバー同士が「そこは危ないから別の手順でやろう」と、互いの安全を気遣い、注意し合える強固な仲間意識が生まれました。

年間11件あった労災が完全ゼロへと至るプロセスの中で、工場の雰囲気はガラリと変わりました。安全に対する意識が高まった現場は、整理整頓や作業の無駄取りの意識も同時に向上し、結果として生産性や品質の面でも圧倒的な成果を叩き出すようになりました。

安全な職場をつくることは、経営者が果たすべき最大の利他であり、従業員とその家族に対する絶対的な責任です。ルールで縛るのではなく、仕組みと対話で現場の主役である従業員の主体性を引き出すこと。これこそが、いかなる危機をも乗り越える、世界基準の強い製造企業を創り上げる原点です。

HP:https://virtueandintellect.com/