【m-SHELL分析×なぜなぜ分析】労働災害の原因を「個人の不注意」にしない!人と環境のミスマッチを暴き出す真因追究法
労災の真因を突き止め、現場から危険を根絶するために極めて強力なアプローチが、航空業界などで培われたリスク分析フレームワークである「m-SHELL(エムシェル)分析」と、製造業の王道である「なぜなぜ分析」を融合させた真因追究法です。この手法は、災害の原因を作業員個人(Liveware)だけに求めるのではなく、彼らを取り巻く周囲の環境や仕組みとの間に生じた「ミスマッチ」として捉え、科学的にエラーの背景を暴き出します。
個人の不注意という思考停止から脱却し、組織的な対策へとつなげるためのハイブリッド分析アプローチには、3つの決定的な展開プロセスがあります。
第1に、m-SHELLの5つの要素を用いて、人と環境の「不適合(エラーの温床)」を多角的に洗い出すことです。m-SHELLでは、中心にいる本人(Liveware)を取り巻く要素を、経営・管理体制(Management)、ソフトウェア・ルール(Software)、機械・設備(Hardware)、環境(Environment)、周囲の人間関係(Liveware)の5つに分類します。災害が起きた際、本人の行動だけを見るのではなく、「マニュアル(S)は分かりにくくなかったか」「機械の操作パネル(H)の配置に無理はなかったか」「現場の照明や温度(E)は適切だったか」「上司への報告のしやすさ(L)はどうだったか」といった相互のつながりを徹底的に検証し、人と環境のミスマッチを浮き彫りにします。
第2に、抽出されたミスマッチを起点として「なぜなぜ分析」を深く掘り下げることです。m-SHELL分析によって「マニュアルが守られていなかったのは、記載が複雑すぎたから(LとSのミスマッチ)」という事実が見つかったら、そこからなぜなぜ分析をスタートします。「なぜ記載が複雑だったのか」「なぜ現場の意見を反映して改定されなかったのか」「なぜ定期的な見直しの仕組みが機能していなかったのか(Mの課題)」というように、なぜを5回繰り返します。これにより、本人の不注意という表面的な要因を通り越し、最終的に経営層や管理体制の不備という「真の組織的要因」にまで確実にたどり着くことができます。
第3に、分析の全プロセスに現場の従業員を巻き込み、「責めない安全文化」を定着させることです。この複合分析を行う際、最も重要なのは「誰が悪いか」を追究するのではなく、「何がエラーを引き起こしたか」に集中することです。現場のメンバーと一緒に分析を行うことで、従業員自身も気づいていなかった潜在的なリスクや作業のやりにくさが次々と可視化されます。不安全な状態を報告しても叱責されず、プロセスや設備が改善されるという体験を積み重ねることで、現場の安全に対する当事者意識と信頼関係は爆発的に高まります。
労災の原因を個人の問題で終わらせることは、経営における最大のリスクマネジメントの放棄です。人と環境のミスマッチを科学的に暴き出し、システムとして現場の安全を担保する仕組みを構築すること。
従業員が安心してその能力を120%発揮し、一切の危険に脅かされることなく笑顔で家族の元へ帰れる職場をつくり上げることこそが、持続可能で強靭な世界基準の製造企業を築くための、経営者の絶対的な使命です。



