【概念思考】仕組

「仕組みが必要な理由は、集合体であることで生存率が上がる生命体に必要なツールだからである」

個々の能力や考え方に違いがある多様な人間が、何の制御もなく集まれば、強者が弱者を駆逐する脆弱な野生の集団へと逆戻りしてしまいます。集団の崩壊を防ぎ、共に生きるために生み出された合意形成の結晶こそが「仕組み」です。組織や社会という健全な器を維持するためには、時に個人の我執を抑えて仕組みに従う規律が前提となりますが、ひとたびその運用を私物化し、我利我利(がりがり)の道具へと貶める者が現れれば、集団は内側から腐敗を始めます。

「仕組」という言葉の語源を紐解くと、多様な個の力を調和させ、大きな目的へと繋ぎ止めるための設計図が見えてきます。

漢字の起源からみる「仕組」

「仕」:人を表す「亻(にんべん)」に、支える役割や仕事を意味する「士」の組み合わせ。人が誰かのために役割を担い、社会を支える行為そのものを指します。

「組」:関係性を意味する「糸」に、積み重ねる・並べるを意味する「且」の組み合わせ。細い糸をバラバラにせず、整然と並べて一本の強固な「くみひも」へ編み上げることを意味します。

つまり「仕組」とは、集団に属する一人ひとりが自らのしかるべき役割を担い(仕)、それぞれの個性を共通の大義のもとに一本の強固な絆へと編み上げていく(組)ための、あらかじめ練られた美しい構造そのものを意味しているのです。

「仕組」を捉える私の概念としては、以下の3点です。

強制

共生

思い遣り

【コラム:自己最大化の自滅を阻むーー「思い遣り」の血が通った仕組みが共生を担保する】

ビジネスの組織や地域社会における「仕組み」の本質とは、誰か特定の権力者を利するための道具ではなく、多様な人々が調和をもって共に生きる「共生」のためのインフラです。

しかし、仕組みがどれほど精緻に設計されていても、それを運用する人間の精神性が低ければ、容易にディストピアへと変貌します。最も醜悪なのは、知能の高さや立場の強さを悪用し、ルールの不備や隙間を狡猾に狙って、自らの利益だけを独り占めしようとする「我利我利(がりがり)」の輩です。彼らは手段と目的を完全に逆転させ、全体の繁栄という大義を私物化しています。一見、仕組みを器用にハックして自己最大化に成功しているように見えるかもしれませんが、全体への「思い遣り」を欠いた利己的な行動は、組織にマイナスの残骸を撒き散らし、やがては自然淘汰の力によって集団から排除されるか、自滅の道を辿るのが宇宙の因果の法則です。

真に機能する優れた仕組みには、個人の身勝手を律する「強制(規律)」の側面と同時に、その根底に深い「思い遣り(利他・感謝)」の精神が流れていなければなりません。

遅刻をして他者の不可逆な時間を奪わないという約束の履行も、誰が見ていずとも規律を守る陰徳の姿勢も、すべては「他者を想う心」から始まります。トップが公明正大であり、謙虚・素直な人格者である組織では、仕組みそのものがメンバーの魂を磨くための神聖な器として機能し、環境の変化(可逆性や不振)に対しても柔軟に形を変えながら進化していくことができます。

仕組みに従うことは、個性を押し殺すことではありません。全体を支える一筋の糸として自らの役割を全うし、より大きな良縁と果実を社会に送り出すための、最も知的な実践プロセスなのです。