離職率を劇的に下げる「1on1・傾聴術」:部下の本音を引き出す質問の技術
「最近の若い奴は、何を考えているか分からない」
「手塩にかけて育てた中堅社員が、突然『辞めます』と言ってきた」
経営者や組織のリーダーから、このような切実なご相談をいただくことが増えています。 特に今の時代、「個性を出せ」と言われる一方で「空気を読め」という矛盾したメッセージに挟まれ、嫌われないための『演技』と本音を押し殺す『我慢』を強いられている若者が少なくありません。
彼らの心の中にある「静かなる危機」に気づけず、表面的な業務連絡だけで繋がっていると、組織のエンゲージメントは静かに低下し、ある日突然の離職という形で現れます。
これを防ぎ、自走する組織を作るための最強の処方箋が、定期的な「1on1」であり、そこでの「傾聴術」です。
しかし、多くの現場で行われている1on1は、単なる進捗確認や、上司が説教をする「面談」になってしまっています。部下の本音を引き出し、離職率を劇的に下げるために必要な「質問の技術」について、私の経験を交えてお伝えします。
■ 真の傾聴とは、「黙って聞くこと」ではない
部下が会社を辞める最大の理由は「給与」や「労働時間」そのものよりも、「自分の存在や想いが、この組織で尊重されていない(聴いてもらえていない)」という諦めにあるということです。
部下の本音を引き出す1on1にするためには、上司の「聞き方」を180度変える必要があります。傾聴とは、単に相手の話に相槌を打つことではありません。「相手が言葉の奥底に隠している『感情の解像度』を一緒に上げていく行為」です。
例えば、部下が「今の業務、ちょっとしんどいです」と言ったとき、多くのリーダーはすぐに「何がしんどいの?」「どうすれば解決できる?」と『正解検索』の質問を投げかけてしまいます。これでは、部下は「詰問されている」と感じて心を閉ざしてしまいます。
■ 本音を引き出す「2つの質問の技術」
部下が演技を捨て、本音で話し始めるための具体的なアプローチをご紹介します。
1. 「事実」ではなく「感情」にフォーカスする質問
「しんどい」という言葉の裏には、様々な感情が渦巻いています。ジョハリの窓を開き、お互いの自己開示を進めるためには、まず相手の感情にスポットを当てます。
NG: 「どの作業の効率が悪いの?」
GOOD: 「その仕事をしているとき、どんな気持ち(悔しさ、不安、焦りなど)が一番強い?」
モヤモヤした感情を分解し、客観視させてあげること(メタ認知の支援)で、部下は「この上司は私の『状態』を心配してくれている」と、深い安心感を覚えます。
2. 指示を出す前に「相手の基準」を問いかける質問
自ら決断し、責任を持って動く「胆識」ある人材を育てるためには、上司の答えを押し付けないことです。
NG: 「じゃあ、A先輩に手伝ってもらいなさい」
GOOD: 「〇〇くんにとって、どういう状態になれば『安心して仕事が進められる』と思えるかな?」
主語を「部下(〇〇くん)」にして問いかけることで、本人は自分の意志で決めたルールや目標(セルフ・ルール)に向かって自律的に動き出します。
■ 1on1は、人が誇りを持って働くための「手段」
経営の原点は「利他」にあります。 企業の目的は利益を上げること以上に、縁ある人々を幸せにし、社会に貢献することです。生産性の改善やDXも大切ですが、それらはすべて「人が誇りを持って働くための手段」に過ぎません。
週に一度、あるいは月に二度、目の前の部下の話を徹底的に「傾聴」する。 その15分、30分の積み重ねが、社員の自己肯定感を高め、「この会社で、この仲間と共に歩んでいきたい」という強いレジリエンス(折れない心)を組織に育みます。
製造業の「想い」を現場の「行動」へつなぐ。 現在、私は「製造業リーダーズネットワーク」の代表、および中小企業庁・生産性向上センターのサポーターとして、多くの経営者様に伴走しています。
自走する組織づくりや、離職率低下のための「1on1・傾聴術」「概念思考」の導入について、より詳しい事例を知りたい方は、ぜひお気軽にDMまたはコメントにてご連絡ください。まずは対話から始めましょう。
(Virtue & Intellect 代表 / 国家資格キャリアコンサルタント 鈴木 美徳)


